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スキルとツールの違い

Hermesの能力を広げる手段には、よく似た名前の「ツールセット」と「スキル」があり、さらにMCPもあります。スキルとツールのパネル(英語UIでは Capabilities)を開くと、「スキル」「ツールセット」「MCP」「Browse Hub」のタブが並んでいて、どれをどう使い分けるのか最初は判然としません。MCPも独立した別画面ではなく、このパネルの一つのタブとして統合されています。

この章では、ツールとスキルが「能力の層」として何が違うのかを概念から捉えます。違いが腑に落ちると、「やりたいこと」を前にして、ツールを有効にすべきか、スキルを足すべきか、MCPを足すべきかを自分で判断できるようになります。

下層のツールセットと上層のスキル、横に並ぶMCPの関係。スキルがツールやMCP由来のツールを組み合わせて使う構造を示した図

ツールセットとは ─ エージェントが直接握る道具

ツールセットは、エージェントが直接呼び出す組み込みツール(関数)をまとめた単位です。read_file(ファイルを読む)、write_file(書く)、web_search(Web検索する)のように、一つひとつが具体的で低レベルな操作です。関連する操作がセットにまとめられていて、各行に含まれるツール名(タグ)が表示されます。

道具箱にたとえると、ツールはドライバーやペンチといった個々の道具です。エージェントは「いまファイルを読む必要があるから read_file を使う」というように、目的に応じて道具を直接握ります。実機では数十のツールセットが用意され、その多くが既定で有効になっています。ファイル操作、ブラウザー自動化、コード実行、Web検索、画像生成など、エージェントの基礎体力にあたる能力が並びます。

スキルとは ─ 道具の使い方をまとめた段取り書

スキルは、特定の作業手順やノウハウを記述した拡張です(SKILL.md という形式で書かれます)。個々の道具ではなく、「この目的のためにどの道具をどう使うか」という段取りをまとめたものです。たとえば外部のCLIやサービスの使い方、定型的な作業の進め方が、スキルとして用意されています。

道具箱の比喩を続けると、スキルはレシピや手順書にあたります。「棚を組み立てる」という目的に対して、どの道具をどの順で使うかを書いたカードです。実機では数十のスキルが、領域ごとのカテゴリに分かれて揃っています。GitHubのPR運用、Cloudflare開発、計画立てやデバッグの進め方、図版生成など、特定領域の段取りが並びます。

つまり、両者は能力の層が違います。ツールは「できること(低レベルの操作)」、スキルは「どう使うか(高レベルの段取り)」です。スキルは多くの場合、内部でツールを組み合わせて目的を果たします。下にツールという土台があり、その上にスキルという段取りが乗っている、という関係です。

観点ツールセットスキル
正体エージェントが直接呼ぶ組み込み関数の束作業手順・ノウハウの記述(SKILL.md)
粒度低レベルの具体操作(read_file, web_search)高レベルの段取り(特定作業の進め方)
たとえ道具箱の中の個々の道具レシピ・手順書
主な役割エージェントの基礎能力を増やす道具の使い方・定型作業を教える

どちらも「ONのものだけ」使える

ツールセットもスキルも、トグルがONになっているものだけがエージェントから使えます。これは共通の重要な性質です。

なぜ全部ONにしておかないのか。候補が多すぎると、エージェントが意図しないツールやスキルを選ぶ余地が生まれ、動作が読みにくくなるからです。使う予定のないものはOFFにしておくと、候補の混在を避けられ、挙動が安定します。能力は「持っているほど良い」のではなく、「必要なものだけ見せておく」ほうが扱いやすい、という設計思想です。

「設定済み」と「キーが必要」

ツールセットの行には状態バッジが付きます。「設定済み」は追加設定なしで(または必要なキーが既に揃っていて)ONにできる状態、「キーが必要」は対応するAPIキーなどを設定するまで有効化できない状態です。

たとえばHome AssistantやMixture of Agentsのように、外部サービスや別アカウントを使うツールセットはキーを要します。逆に、キーが要るツールセットでもキーを設定済みなら「設定済み」と表示されます。つまりバッジは固定ではなく、あなたの環境のキー設定状況で変わります。これはツールとキーの設定と連動しています。

拡張は能力と同時に責任を増やす

ツールやスキルを有効にすることは、エージェントにできることを増やすことです。便利な反面、慎重さも必要になります。

用意されているスキルの中には、安全機構を回避する目的のものもあります。たとえば security カテゴリの godmode(LLMのジェイルブレイク手法)や、mlops カテゴリの obliteratus(モデルの拒否応答を除去する手法)です。これらは既定では有効化されない「オプションスキル」で、セットアップ時に自動導入されず、Skills Hub(Browse Hubタブ)のカタログから明示的に導入して初めて追加・有効化されます。導入しただけで自動実行されるわけではありませんが、意図せず使われないよう、必要なスキルだけをONにし、用途が分からないものはOFFのままにしておくのが安全です。

「能力を足すこと」と「リスクを足すこと」は表裏一体です。この感覚は、外部サーバーを取り込むMCPではいっそう重要になります。

ツール・スキル・MCP ─ 拡張の三つの道

ここまでの整理に、もう一つの道を加えると、拡張の全体地図が完成します。エージェントが使えるツールの出どころは、大きく三つです。

  • 組み込みツールセット: Hermesに標準で備わるツール群(hermes-cli が標準)。
  • スキル: ツールの使い方・段取りを足す拡張。
  • MCP: 外部のModel Context Protocolサーバーが提供するツールを取り込む。

ツールセットが「最初から箱に入っている道具」、スキルが「道具の使い方カード」だとすれば、MCPは「外部の業者が持ち込む新しい道具一式」です。出どころが外部である分、MCPには信頼性の判断がより強く求められます。その仕組みとリスクは次章のMCPとは何か、なぜ慎重に扱うかで扱います。

使い分けの指針

やりたいことを前にしたときの、おおまかな判断の順序です。

  1. やりたい操作に対応する組み込みツールセットがあるか。あればONにする(必要ならキーを設定)。
  2. 特定のサービスや定型作業の段取りが欲しいなら、対応するスキルを探してONにする。
  3. 組み込みにもスキルにもない外部サーバーの機能を取り込みたいなら、MCPを検討する。

迷ったら、まず組み込みツールセットで足りないかを確かめるのが堅実です。外部に頼るほど、キー管理や信頼性の判断という手間とリスクが増えるからです。具体的な操作手順はスキルとツールを、入門はスキルとプロファイルを使うを参照してください。

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